メディアから発信される情報を読み取る力  ーメディアリテラシーとはー

私が初めてメディアリテラシーに出会ったのは大学生の時でした。授業で資料として取り上げられた新聞記事から、どのような情報が読み取れるのか、その写真が使われているのはなぜなのか、同じ写真でもライティングが違っていたらどのような印象になるのかなど、たった数百文字の記事から様々な情報を読み取る演習が印象的な授業でした。

最近では、学校教育の中でICT機器が取り入れるようになったり、フェイクニュースが話題になるなど、メディアは私たちの生活のなかに当たり前に存在するものとなっています。また、私たちの生活スタイルを大きく変えた新型コロナウィルスによって、様々な情報が毎日のように発信され、「その情報が嘘か本当かを自分で確かめる力が必要だ」ということが言われるようになりました。

 
フェイクニュースを見破ることがメディアリテラシーではない

メディアリテラシーの話をしていると「嘘か本当かを確かめるのって大事だよね」と返ってくることがありますが、リテラシーは読み書きするのことを指しており、メディアリテラシーは「メディアを読み解く力」のことを言います。
最近はフェイクニュースが話題になることも多く、私自身も「その情報は本当なの?」と、疑いから入ってしまいますが、それを確かめるには「メディアを読み解く力」が必要なのです。

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画面の外側にはどんな情報があるのかを意識する

たとえば、震災が起こった時、ニュースでその様子が映像として流れます。被害の状況や避難所の様子が映像として放送されれば、その被災地にはたくさんの支援物資が集まります。このとき、「他にも被害があった地域はないのかな?」と画面の外側にあるものにも目を向けることができるようにするのがメディアリテラシーです。

実際、被災地にボランティアへ行った、私の友人から、ニュースで取り上げられた地域には支援物資がたくさん届いていたけれど、同じくらいの被害があってもニュースで取り上げられていない地域には支援物資があまり届いていなかったという話を聞きました。
ニュースは真実を伝えているけれど、全てを伝えることができてるのかというと、そうではないことがよくわかる事例です。

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たった15秒のCMで育てるメディアリテラシー

食器洗剤や洗濯洗剤のCMを思い浮かべてみてください。どんなCMが思い浮かんだでしょうか?女性が洗い物をする姿が思い浮かんだ人もいれば、夫婦で食器洗いをする姿や男性が洗濯をする姿が思い浮かんだ人もいるではないでしょうか?しかし、今から30年前はこのようなCMの主役は女性がほとんどでした。
なぜ、このような変化が起こっているのでしょうか?

私は、社会の意識の変化を取り込んでCMが作られているということ、そして、このCMを見た視聴者はそれが当たり前だと思うようになり、社会全体の意識を変えていくことに繋がっていると見ることができるからではないかと考えました。皆さんはどのように考えますか?

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さらに、最近のもので例をあげるなら、洗剤やウエットシートなど、衛生用品のCMが良い例になるでしょう。コロナ禍前には抗菌・殺菌という表記だけの物が多かったのですが、コロナ禍後には、そこにプラスして「抗ウィルス」と表記されるようになりました。これについては、新型コロナウィルス対策が影響しているのは言うまでもありません。

メディアリテラシーを身に付けて様々な視点で物事を見る力を養う

たった15秒のCMでも人によって受け取る印象は異なります。それは、性別や年齢、それまでの経験、住んでいる地域など、それぞれの人が持つ、社会的・文化的背景に基づいて、そのCMを見ているからです。
メディアに対して、自分がどのような印象を持ったのか、どうしてそのような印象を持ったのか、他の人はどのような印象を持ったのか、また、そのような違いがあるのはなぜなのかを考えることで、様々な視点で物事を見る力、つまり批判的思考力を育てることができるのです。これは、子どもの「生きる力」や「考える力」につながると私は考えています。